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おかわり

たーんとおたべ

自虐の詩

買った。読んだ。

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)


自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)


おもしろかった。
「下巻だけよかった」ってレビューや感想もあったけど、わたしはむしろ上下合わせてこその素晴らしさだと感じた。
主人公はびんぼったれのきったないおっさんとおばはんなんだけど、たまらんほどの純愛でキュンキュンする。これ読んで『キュン!』ってこない人とはわたし、仲良しになれない気がする。これ読んで『キュン!』ってこない人とは、いっしょにお酒飲んでも楽しめない気がする。イサオ、ひどいヤツなんだよ。けんかばっかしして、フラフラしてあんまり家に帰らず、博打と酒ばっかやってて働かないの。でもね、幸江に絶対手を上げない。幸江に「金貸してくれ」っていうけど、「金がないからもっと稼げるところで働け」とは言わない。家にお金があったらどうにかして持っていくけど、なきゃないで黙って、夕飯にカップラーメンを「うまいぞ」っていって食べてくれる。イサオは幸江にいっぱい用事をいいつけるけど、何かで釣ったり(金やセックス)、殴ったりすることで無理やりなにかをさせたりはしないんだ。むちゃくちゃだけど、不器用で優しい。すごくかわいげのある男。そんなイサオを好きで好きで仕方のない幸江も、またかわいい。ちょっとしたイサオの行動や言動で「わーい」って喜ぶ。それで、すぐベタベタすんの。いっしょの布団に入って体温を感じたり、「あの人の匂い」をかいだりするのは、わたしもすき。いまだにすき。‥‥幸江みたいに尽くすタイプではないけれどね。
この二人はケンカをしょっちゅうしてる。その仲直りの仕方も好き。窓から差し出される牛丼だったり、電話での「晩のおかず何がいい」「なんでもいい」ってやりとりだったり。乳もんでアンアンやって仲直りってのより、繊細で、純愛で、断然好き。
幸江は、一見不幸に見える。けど、ほんとうはものすっごく幸せなんじゃないかなぁ。こんなに誰かを愛する事が出来て。大人になって気づいた。誰もがみんな、一人の人を深く深く愛せるわけではないってこと。情熱を傾けて(それはもちろん、激しい形をとるものも、ごく静かなものもある)恋愛できるわけではないってこと。母にあてた手紙で幸江は「この人生を二度と 幸や不幸で はかりません」「なんということでしょう 人生には意味がある だけです。」「ただ人生の厳粛な意味を かみしめていけばいい。勇気がわいてきます。」としたためる。そんな風に人生を受け止めて味わえる幸江は、やっぱりとても幸せなんだ、とおもう。自分で自分を幸せに出来る人は、とても気高く強くて、そして美しい。