おかわり

たーんとおたべ

2017年2月6日 橋下羽鳥の番組 小林よしのり

めっちゃ面白かったから起こしました。

怒られたら消します。

 

◯羽鳥
 では、小林さんが橋下さんときょう話し合うテーマ、お願いします。 
 「トランプを見習え!日本も自国第一主義をとるべき!」


(日本もトランプ大統領を見習い、
 日本ファーストにするべきと小林は主張。
 それでは、論客面談スタート。)


◯羽鳥
 小林さん、これはどういうことでしょう。

◯小林
 どこの国だって自国第一主義なんですよ。それで、保護主義に転換してしまって、それをみんなで批判しているわけですよ。でも、全くおかしな話で、アメリカに一番都合がいいようにグローバリズムでやってみたんだけれども、自国民第一主義じゃなかった。つまりは多国籍企業第一主義だったということは判明しちゃったんですよ。結局儲かるのは多国籍企業ばかりだと。それでとてつもない格差ができてしまったんです。


(国内の格差の広がりを解消するために、
 トランプ大統領はグローバリズムを捨て、
 一般国民の利益を保護する方針に転換したと小林は主張。)


◯小林
 その現実をやっぱりトランプというのはわかったんでしょう。そこで保護主義に転換したということですよね。


◯橋下
 今みたいなそういう批評、自国主義だ、グローバリズムだ、保護主義だ、やはりこれは全部レッテル張りじゃないですか。中身の議論になってないんですよ。

◯小林
 いや、レッテル張りじゃないですよ。


◯橋下
 というのは、具体的な政治行政の現場においてはグローバルと保護主義とバランスをとっているだけなんですよね。どっちか片一方に、もう100ゼロの話じゃないわけですよ。


(各国間にある関税や法律などの壁を取っ払い、
 世界の一体化を進めるグローバリズム
 それを推し進めてきた結果、世界中で格差が広がったとも言われる。
 そこで小林は、関税などの壁を維持し、
 日本国内の産業を保護すべきだと主張しているのだ。)


◯橋下
 今やっている貿易推進策のここが問題だ、あそこが問題だという指摘をしなきゃいけないと思うんですよ。今の貿易推進体制のどこが問題なのかということをお聞きしたいんですよ。


◯小林
 例えば、具体的な話でいくんだったら、NAFTAというのを見直すと言っていますよね、トランプは。

※NAFTA(北米自由貿易協定):アメリカ合衆国・カナダ・メキシコの3カ国による貿易圏を生み出した協定。

 NAFTAというのを結んだがために、アメリカのほうからメキシコのほうに小麦、トウモロコシというものがもうばんばん入ってきたわけですよ。そうすると、メキシコの中の農家は全部壊滅しちゃったんです。だから移民になるんですよ。それで国境を超えてどんどんアメリカに行くんです。
 そうすると、アメリカの中は移民を低賃金で雇えるから、不法移民も含めて。だから価格がどんどん下がっていくわけです。賃金の価格が下がる。じゃ、そうするとアメリカ国民も賃金の相対的な評価でどんどん賃金が下がるんです。
 だから、グローバルというのは国境を超えてしまうと底辺への競争というんですよ。つまり、賃金がどんどん下がるんです。


◯橋下
 そうしたら、今の関税を変えろということですか。


◯小林
 そうですよ。当然関税は必要ですよ。だから、トランプがやろうとしていることは、非常に理にかなって、わかっている。
 しかも、なおかつそれを言うんだったら、例えばモンサントみたいな多国籍企業の、農業の大企業がメキシコに入ってくると。そのときには、消費者の目線で言えば「トルティーヤが安くて食えるぞ」と言っていたんですよ。

モンサント社:アメリカに本社を持つ多国籍バイオ科学メーカー

 ところが独占企業になっちゃったんです。地元の企業が全部崩壊しちゃったから。そうすると、独占企業になったら今度は値を上げ始めたんですよ。だから、以前よりも高くなっちゃったんです。
 じゃ、そうすると、メキシコ国民は自由貿易をやりましたと、けれども自国の産業は崩壊しました、これと同じことがTPPをやってしまったら起こる予定だったんですよ。


(関税の撤廃や貿易ルールの統一などによって、
 参加する国々の経済発展を目指すTPP。
 2015年10月には、日本やアメリカなど12カ国の間で
 大筋の合意を得ていのだが、
 先月23日、大統領はTPPの離脱を正式決定。
 これによりTPPは発行の見通しが立たなくなった。
 TPP反対派の小林に対し、賛成派の橋下が反論を開始。)


◯橋下
 もちろん12カ国、TPP、問題点はいろいろあるかもわからないけれども、日本の立場として自分たちの有利になることを提案し、当然交渉ですから自分たちの不利なところものまなきゃいけない。この妥協点があの12カ国のTPPであって……


◯小林
 あなた、じゃ、TPPの中身は知っているの。


◯橋下
 ある程度はです。


◯小林
 どういうことなのかも知っているのね。


◯橋下
 いや、だから、僕が聞きたいのは、僕はあのTPPで、全部の中身について見て問題点を指摘するんじゃなくて、重要なことは12カ国が一致したということが僕は重要だと思っているから。もし問題だというんであれば、TPPのどこが問題なのかを具体的に言ってもらいたいんですよ。


◯小林
 じゃ、なぜそれを発表しないの。何で秘密協定になっちゃっているの。

※TPP交渉は保秘契約があり徹底した秘密主義が貫かれた。


◯橋下
 それは交渉の過程だからでしょう。だから、もうこれから発表するじゃないですか。

◯小林
 いや、今でもまだわかっていない状態でしょう。わかっていないことを話し合わなくちゃいけないわけでしょう。


◯橋下
 もちろんそうです。交渉事というのは、僕もいろんなことをやりましたけれども、政治の現場で。あれだけの膨大な中身について、問題点を指摘すれば幾らでも出てくるんですよ。だからやってみて、だめなところを修正していくという考えだったらだめなんですか。


◯小林
 トランプは、これをやってしまうとまた多国籍企業だけがもうかると、自国民は疲弊していくということがわかってしまったから、TPP永久離脱というふうに言ったわけです。立派な人だなと。


◯橋下
 トランプは、もちろん国民を保護しようということもあるかもわかりませんが、要はマルチ、多国間協定であった場合にはアメリカの利益が相当損なわれたと、要は1対1であればアメリカというのは強いわけです、軍事力を背景に。今回のTPPというものを見れば、やっぱり日本はニュージーランドと組む、東南アジアのTPP3カ国と組みながら、アメリカとやっぱり対峙しているわけですよね。そういう力学の中でできたTPPは、トランプは直感的に、これはやっぱり1対11でやるより1対1でやったほうがより有利な交渉になると思ったと思うんですよ。


◯小林
 だからFTAに持ち込まれたらもっと危険という部分もありますよ。今から、2国間協定。

※トランプ大統領はTPP離脱後2国間で貿易交渉をしようとしている。


◯橋下
 だから、アメリカの立場でトランプを評価するのは、それはそのとおりだと思います。だけど、じゃ、日本の立場で、これから2国間協定やっていくのか、僕はこれもいいとは思うんだけれども、やっぱり12カ国みんなで合致したということと、やっぱりここがちょっと違うのが、貿易に対する考え方として、日本だって貿易で潤ったんだから、そういう中後進国にチャンスを与えなきゃという。


◯小林
 そこがまたおかしなところがあって、日本は結局輸出で潤う国だというふうな……


◯橋下
 かつてはね。今は違いますよ。


◯小林
 という概念があるんだけれども、輸出企業なんていうのは日本の中でほんの数%ですからね。日本は中小企業の国ですよ。90%以上が中小企業で成り立っているんですよ。中小企業の従業員が7割ですよ。つまり内需の国なんです、日本は。国内で回すことができるような国なんですよ。外需の国じゃないの。韓国とか中国は外需の国なの。輸出しないとやっていけない国なんですよ。


◯橋下
 内需というものが強い国ではあるけれども、中小企業の率のことをいえば、輸出企業は確かに数%かもわからないけれども、中小企業というのはそこにぶら下がっているわけですよ。


◯小林
 いや、関連企業も含めてですよ。


◯橋下
 関連企業はね。やっぱりもうこれは考え方の違いだから。僕はこのときに……


◯小林
 考え方の違いじゃなくて、政治家は国民をちゃんと豊かにしなさいと言っているんですよ。それは国内の再配分だけではもうできませんよということを言っているの、わしは。


◯橋下
 でも、それは貿易をとめて国が産業の……


◯小林
 貿易をとめるんじゃないと言っているでしょう。インターナショナルな貿易をしなさいと言っているんですよ。


◯橋下
 インターナショナルな貿易というのは、計画経済ですよ。


◯小林
 いや、全然そうじゃない。


◯橋下
 だってかつての高度成長時代において……


◯小林
 いやいや、じゃ1970年代は、何、計画経済だったの。


◯橋下
 半分そうだと思います、半分。だって、それは関税率にしたって何にしたって、全部役所が介入して決めているじゃないですか。


◯小林
 それはゼロにしてしまって本当にいいの。


◯橋下
 いや、だからゼロにはならないように一部かけているじゃないですか。


◯羽鳥
 TPPに参加したら地方はどうなるんですか、小林さん。


◯小林
 例えば牛肉とか乳製品とかがばんばん入ってきますよね。そうすると北海道はもう全部廃業という状態になっていくでしょう。その危機感を北海道は持っていますよ、そもそも。


◯橋下
 ただ、それは崩壊していくのか……


◯小林
 いや、それは都市部であなたは考えているからそういうふうに言うけれども、わしがTPP反対と言ったら、地方の新聞とかそういうところからインタビューが来ますよ。だって地方はみんなTPP反対だもん。


◯橋下
 小林さんが間違っているとは言いません。
 ただ、じゃ、どっちの方向性を決めるのかとなれば、最後は国民が判断するしかないじゃないですか、どっちの方向で行くのか。
 だから今、小林さんが言われたとおり、TPPを破棄する、TPPをやめるというのは地方部には有利になるでしょう。


◯小林
 地方はみんな反対だからね。


◯橋下
 反対だからね。だから、地方は有利になるでしょう。だけれども、都心部、そういうところから見れば、TPPということで自由貿易を推進してという、それでメリットを感じる人たちも都心部には多いと思います。
 あとは、どっちが正しいの問題じゃなくて、最後は国民がやっぱり選挙というものを通じて決めざるを得ないと思うんです。


◯羽鳥
 橋下さんはどっちなんですか。保護貿易主義なのか自由貿易主義なのか、どっちかと言ったらどっちなんですか。


◯橋下
 どっちじゃないんです。具体的な制度を見て、やっぱりそれは具体的な制度としてやろうと思えば、これは交渉事ですから、自分の言い分だけでは通りませんから。当然……


◯羽鳥
 じゃ、トランプさんのやり方もある意味認める部分もあるし、自由貿易ももちろん認めるところもあるという。


◯橋下
 ただ、大きな方向性としては、やっぱり貿易というものは進めていかざるを得ない。そのときに、日本に不都合な面があるんだったら、貿易の体制で何か変えるんじゃなくて、国内で格差是正策というのをしっかり打っていくべきだと僕は思っているんですよ。


◯小林
 できませんよ、それ。できないんですよ、グローバリズムの中においてはね。


◯橋下
 なぜですか。


◯小林
 だって、結局、底辺の競争になってコストをどんどん下げていっているわけだから。
 そうなると、国内では例えばアベノミクスとかいって、それで金融でやろうとかという、今度はどんどんお札を刷ったでしょう。あれ、わしは最初からトリクルダウンはないと言っていたんです、始めた何年も前からですよ。


(トリクルダウンとは、
 あふれる、浸透するという意味で、
 アベノミクス初期によく使われた言葉。
 大企業や富裕層を優遇する政策によって
 投資や消費がふえ、経済が活性化する。
 その結果、給料がふえるなど庶民にも
 恩恵があると言われていたのだが。

 ここでも2人の意見はかみ合わない。)


◯小林
 テレビは全部、トリクルダウンがあって今から景気がよくなるぞと言っていたね。ところがならなかったんですよ。当たり前です、これは。グローバリズムだから企業は内部留保でため込みます。海外の企業と戦わなきゃいけない。なおかつ、お金ができたら海外に投資します。そうするともっとコスト安になっていきますから。そうなると、国民は何にも潤わないんですよ。これがグローバリズムですよ。


◯橋下
 けれども、それは小林さんの考えているグローバリズムであって。


◯小林
 考えているじゃなくて、現象としてもう結果があらわれたことなんです。


◯橋下
 現象としてはね。


◯小林
 もうそろそろそれを認めないとだめ。


◯橋下
 いえ、アベノミクスを僕は全賛成はしませんけれども、失業率はどんどん下がってくる。今3.8%ぐらいですか。

 ※完全失業率3.1%(2016年)


◯小林
 それも全部からくりがあるだけれどもね。


◯橋下
 これは非正規の雇用がふえてきているということもありますけれども。
 僕が何を言いたいかというと、いろんな問題点はあるんだけれども、100%完璧な社会制度なんてないわけですから、今言ったように、日本も貿易で潤ってきたんですから、中後進国に対してそういうチャンスを与えるのかどうなのか。
 それと、僕はもう一つ小林さんにお聞きしたいのは、国が貿易というものに制限をかけていくということになると、消費者が商品を選択する自由というものが狭まってくるわけですよ。だから、もちろん農業主とか、貿易が進むことによって打撃を受ける産業はありますけれども、消費者からすると、それが国内の製品なのか海外の製品なのかは別として、いい製品を買いたいわけじゃないですか、現実の視点で見たときに。アメ車が本当にいいのであれば残りますよ。やっぱりそこは競争というものの中でいいものが残ってくる。アメリカの国民が日本車のほうがいいということであれば、それを買っていくのは当然だと思うんですよ
 僕はそのときに、貿易というものをある意味推進するのをやめて、特定の産業を保護していくということになれば、僕は小林さんにお聞きしたいのは、自動車はわかりました。ほかの産業だって淘汰されるわけですよ。じゃ、ほかの産業も弱いところは全部保護していくんですか。


◯小林
 保護しなきゃいけませんよ。


◯橋下
 全部保護していくんですか。
 だから、そこはやっぱり、そうすると、もうここは考え方の違いで、ある意味これは共産主義体制のほうに近づいていきますよ。


◯小林
 いや、全然。


◯橋下
 だって政治経済の現場で、じゃ関税率を決める、何%にするのか、どの産業についてどうやって関税を上げていくのか、こんなことを政治行政、役人が全部きれいに決められるわけないじゃないですか。それを歴史が証明しているのが、ソ連の崩壊につながり、共産主義の崩壊につながったんです。


◯小林
 あれは国家でやっているから。


◯橋下
 だから、僕は、それを政治経済の現場にいて、役所はそんな能力ないです。この世の中に氾濫している財について、商品について、これはこれだけ保護しましょう、これはちょっと関税率をこれぐらいに下げて競争にさらしましょう、こんなことできるわけないです。


◯小林
 いや、今でもやっているんですから、それは。


◯橋下
 だから、それをもうなるべくなしにしていきましょうと。


(市場競争によって消費者に恩恵が生まれるという橋下に対し、
 小林は競争によって恩恵を受けるのは金持ちだけだと反論。)


◯橋下
 安い商品が入ってきて、いい商品が入ってきた場合に、じゃ日本としては競争力がないんであれば質で勝負していくのか、やっぱり商品として残るようには努力しなきゃいけないじゃないですか。


◯小林
 ところがそれもまた落とし穴があって、例えば、物すごく立派なイチゴがとれるというような農家があったとする。これはグローバリズムに適応できて、「俺のところの農家はそれでもやっていける」というふうに言える。そうすると、これは非常に高価格な果物なんですよ。そうなると、これを食べられるのは世界中の富裕層なんです。日本の一般人というのは食べられないんです。


◯橋下
 安い海外から入ってくるそこそこの値段のやつで、そこで我慢しなきゃいけませんよ。


◯小林
 だから、わしなんかは富裕層に入っているから、大した打撃は何もないんですよ、はっきり言って。うまいものをちゃんといつでも食える。そういう強い農家から買って。
 けれども、わしはやっぱり一般の多くの庶民の味方なんですよ。ここが違うんですね。


◯橋下
 いや、それは違います。


◯小林
 あなたはとにかく強者の見方になっちゃっているんですよね。


◯橋下
 いや、それは決めつけです。だって弱者保護、それから格差是正というものは必要だということで、大阪でもいろんな政策をやっています。
 僕は小林さんに言いたいのは、今、地方を助けるんだと、農家を助けるんだ、それは格好いいですけれども、でも農業だけじゃなく、地方部だけじゃなく、廃業していっている事業者というのもほかにもたくさんいるわけですよ。じゃ、何で小林さんは農家だけを救うのか。


◯小林
 いや、農家だけじゃないですよ。


◯橋下
 じゃ、ほかの産業。


◯小林
 ありとあらゆるところ。例えばTPPに合意したとしますよ……


◯橋下
 いや、TPPをやらなくても。


◯小林
 やらなくても一緒なんだけれども、FTAでも同じことだからね。FTAだって同じことが起こるかもしれない。


◯橋下
 いや、貿易の問題じゃなくて、貿易関係なくお店なんていうのは、だめなお店は潰れていっているじゃないですか、現状。だから、貿易の問題だけじゃなくて、小林さんの考え方というのは競争力のない事業主、これを徹底的に全部救っていくという考え方なんです。


◯小林
 いや、そういうことじゃないですよ。


◯橋下
 そしたら、貿易のところだけ救うというのは矛盾しているじゃないですか。


◯小林
 いや、それは70年代だって潰れていく企業はあることはあるでしょう。けれども……


◯橋下
 じゃ、一緒じゃないですか。貿易である意味競争力がなくなって潰れていってしまうのと、貿易とは違うところで……


◯小林
 潰れるのを加速させること自体がよくないということを言っているんですよ。


◯橋下
 でも、加速というのは、あとはもうスピード感の、主観の問題であって。


◯小林
 基本的にグローバリズムというのは、この産業は得意だからやると、そのかわり農業は全部潰してもいいというやり方でルールを決めてしまうんですよ。そうなると国際分業体制になってしまうんですね。


◯橋下
 そうですね。


◯小林
 それぞれの産業が全部分業されてしまっているということになるんですよ。うちではもう農業はすっかりだめですよと、けれども自動車は力いっぱい売れますというやり方で、国際分業体制になっていくんですよ。
 ところが、これでもし万が一温暖化とかいろんなこと、危機が訪れたときは、やっぱりみんな自国中心主義ですよ。つまり、もう輸出しませんと、あなたのところは飢えてくださいということになってしまうんですよ。だから、わしはそういう国際分業体制は非常に危ないと思っているんです。


◯橋下
 もちろんそうです。だから今、小林さんが究極の話をされましたけれども、やっぱり僕は政治行政の現場からして、役人だって国内経済全部を計画経済的にし切れないけれども、このTPPの問題で特定の産業がゼロになるような、そんなばかな協定は僕は結んでいないと。


◯小林
 例えばアメリカが建国されたときは、南部のほうは農作物をつくっていましたね、黒人奴隷を使って。北部のほうは工業化が進んでいなかったんですよ、イギリスから独立した後。そのときにリンカーンは徹底的な保護主義をやったんです。それで北部の工業化を保護して守ったんです。それで強くなってから今度は輸出に転じるんです。こういうやり方をやっているんですよ。だから、アメリカというのは基本的に、伝統的に、まず最初は保護主義から出発しているんですね。
 だから同じことで、まず保護しておいて、強くなったら次は輸出に転じていけばいいということで、これは自国第一主義です。


◯橋下
 いや、そこにかなりの矛盾があるのは、さっき小林さんが言ったのは、日本はもう輸出の国じゃないんだというように言ったじゃないですか。そしたら輸出を保護する必要はないわけですよ。じゃ、国内産業のところが問題で、やっぱり日本の経済の60%は個人消費ですから。そしたら、輸出の部分は保護する必要はないわけでしょう。そしたら、国内産業の何かを守るというんじゃなくて、いい製品、いい商品を選びたいという消費者の欲求を満たすことのほうが政治的にはやらなきゃいけないことだと思っているんです。だから、僕はどの産業を……


◯小林
 じゃ、いい農業を消費者に輸入してから与えますとかと言っておいて、そして合意したときに品質表示をしませんと。これは遺伝子組み換えの作物ですとかという表示をとってしまえというのがルールなんです。これをやると、結局は遺伝子組み換えのものを日本国民は食わされるんです。ここで勝っているか負けているかというのは重要なんですよ。


◯橋下
 だから、そこは小林さんの一番の焦点だと思いますが、遺伝子組み換えについては僕も問題があるとは思うけれども、世界各国はそこまでゼロリスクを求めていないわけです。小林さんの意見を否定はしないけれども、だからといって貿易というものを推進していくということを否定するのは……


◯小林
 貿易を否定していると、何遍も、何遍でも言うけど、わしは貿易はやっていいと言っているんですよ。何か要するに、保護主義とかと言ったら鎖国だと思っているんですよ、問題は。


◯橋下
 抽象的な議論だったら、国内の産業を、弱いところを守るというのは、それは何となくはそのとおりだなと思うんだけれども。


◯小林
 しかも、産業だけの問題じゃないんですよ、これは。非関税障壁というのがあるんですよ。

非関税障壁:貿易を行うとき関税以外の方法で制限を行うこと。

 非関税障壁というのは、日本の中でこういう商慣習があるからだめだと言ってくるんですよ。これがまた大問題で、非関税障壁を撤廃させられると。


◯橋下
 もちろんそうですよ。だけど、そこはバーターで、日本にとってもこれは他国の関税を下げてもらう、日本にとっては輸出がしやすくなる、そういうことのバーターでそこは取り決めしたわけじゃないですか。だから僕は物事を、TPPにしたって、僕がいつも言っているのは、政治や行政というのは100%完璧じゃないけれども、今よりもよくなるかどうなのかと、よりましな選択しかないと思っているんです。小林さんはこれで日本社会は悪くなると感じているし。


◯小林
 うん、そうそう。グローバリズムを推し進めていくと絶対に悪くなると思っているんですよ。


◯橋下
 グローバリズムというよりもTPPというものに関して。


◯小林
 TPPは全然だめだと思っているんです。


◯羽鳥
 日本はアメリカとどうしていけばいいですか。


◯小林
 日本も自国第一主義、これでやらなければいけないということなんです。だってトランプは保護主義がアメリカの繁栄と強靱さをもたらすというふうにあの演説で言っていたじゃないですか。明確に保護主義というふうにトランプはもうかじを切っちゃったんですね。


◯羽鳥
 もう、じゃ、保護主義保護主義でいいんですか。


◯小林
 うん、そう。それでいいんですよ。


◯羽鳥
 それでいいんですか。


◯小林
 ああ、それでいいんです。
 ただ、保護主義と言ったときに、またあれだけれども、じゃ、お互いのいいところをちゃんと話し合いながら貿易をやりましょうというふうに考えるしかないわけです、そこは。


◯橋下
 だから、トランプが行き過ぎたところを正そうというのは、それはもうアメリカにとってはそういう考え方はありだと思いますよ。自国第一主義というのも、アメリカンファーストということを言って相当メディアは批判しますけれども、だって僕も政治家やっていましたけれども、有権者から選ばれているわけですから、その有権者のことを考えるのは政治家の第一使命です。アメリカ大統領はアメリカ国民から選ばれているんだからね。
 だから、やっぱり自国のことをまず考えて、そこにある程度余裕が出たときに他国のことも考える、これは僕、きれいごとじゃなくて、そうするのが政治だと思うんですよ。


◯小林
 うん、全くそのとおりですよ。


◯橋下
 それをきれいごとのように、国際協調主義だ、他国のことを考えろというのはやっぱりおかしくて、まずは自国。


(後 半)
(因縁の宿敵、橋下と小林。貿易をめぐる対立はさらに深まる。)


◯橋下
 どうしても納得できないのは、どの産業、どの事業者を守っていくのか。小林さんはTPPの問題を捉えて貿易のところだけに焦点を当てていますけれども、もう国内において貿易とは関係ないところで、負けた企業というのは退出させられているわけですよ。


◯小林
 それは当たり前ですよ。


◯橋下
 だから、それが貿易の分野だけ守ってほかの分野のところでは守らないというのは違うと思う。だから、そこはある程度自由にさせて、あとはしっかりとやっぱり弱者救済、僕は教育の無償化にしたって、失業保険にしたって、それから失業したときの就業支援にしたって、ここを徹底的にやるのが僕は政治の役割だと思うんです。


◯小林
 じゃ、そこはどこからお金が出るんですか。例えば今、6人に1人の子どもが相対的貧困になっていますよ。6人に1人というのは、これはかなり多いですよ。わしが子どものころというのは、要するに高度経済成長の真っただ中だったけれども、大体50人学級の中で1人ぐらいしかいなかったです、そういう貧困の子どもは。


◯橋下
 小林さん、考え方として、これはもうどっちが正しいという話ではないのかもわからないけれども、貿易のところで消費者の選択とかそういうことを狭めていったりとか、中後進国がこれから伸びていこうというチャンスを妨げるんではなくて、貿易のところは自由化をしていきながら、徹底的に弱者救済のところに手を打っていくというのが政治の役割だと僕は思っているんです。


◯小林
 じゃ、内部でそれがやれるということですね、このままでも。


◯羽鳥
 ということでお時間でございます。初対面で。


◯小林
 あ、もう終わってしまったのか。


◯羽鳥
 はい。


◯小林
 大体、この後皇室問題をやらなきゃいけないと思っていたのに、そもそも。


◯橋下
 そうそう。そうなんですよね。


◯羽鳥
 初対面、いかがでしたか。橋下さんの印象。


◯小林
 印象。改革派だなと。保守ではないなというふうに思いました。進歩主義者だなと。


◯羽鳥
 じゃ、次回来ていただいてちょっと。


◯橋下
 僕は保守、進歩主義という言葉ももう使う時代じゃないと思っているんですよ。もう中身の問題ですから。何が保守で何が進歩主義かということが定義できないんですよ。


◯羽鳥
 お時間でございます。これはもう時間が幾らあっても足りないということで。


(小林 退出)


◯羽鳥
 小林さんとの初対面、いかがでしたか。


◯橋下
 いや、おもしろかったです。


◯羽鳥
 そうですね。


◯橋下
 いろんな持論が固まっていますからね。



(小林 控室にて)
(議論を通じ、橋下について感じたことは)

◯小林
 橋下さんは完全に観念に冒されちゃっているんです。もう完全に思い込んじゃっているから、自由貿易グローバリズムで世界中が豊かになると。ならないんですよ、それは。ならなかったからトランプが出てきたんですよ。その現実をもうそろそろ見ないといけない。現実を見ていないもの、出ているのに。


(小林がスタジオで言えなかった橋下への苦言を漫画に。
 小林よしのりが漫画で描いた橋下へのメッセージとは。)


◯小林
 「橋下氏よ、安倍晋三に媚売るなよ」。
 自由貿易推進論者で、なおかつ皇室典範改正せずに特別法支持、全部安倍政権と一緒じゃないかという。いつも手遅れなんです。いつもわしは先に言っているんですよ、アベノミクスは何にもならんよと。