おかわり

たーんとおたべ

平成29年4月25日 法務委員会参考人招致 小林よしのり

近いうちに国会の会議録に上がると思いますが、速報としてアップします。
※ちょっと見づらいので直しました。

290425法務委員会参考人招致

衆議院インターネット審議中継


○小林参考人 おはようございます。
 きょうは共謀罪を考えるに当たって、2つの事案を直接体験したことがありますので、その話をさせていただきたいと思います。

 1つは、1994年、坂本弁護士一家の事件が迷宮入りしていたときに、「ゴーマニズム宣言」という漫画でわしはこれに対する推理を描きました。限りなくこれはオウム真理教の犯罪ではないかというようなことをにおわせるような漫画を描きましたので、オウム真理教のほうからたちまち抗議がやってきました。何度も交渉いたしまして、そのたびにわしは謝罪をはねつけました。そうすると、オウム真理教名誉毀損で裁判に訴えてきまして、それから裁判闘争になりました。それと同時に、実は、これは後からわかったことなんですけれども、麻原彰晃のほうから小林よしのりを暗殺せよという指令が出まして、それでVXガスを持った暗殺団が常にわしを尾行するという状態になってしまいました。

 わしが明確に察知したものは、1つはわしの仕事場のマンションの下に、山形明とかという元自衛隊の信者がVXガスを持って待っているという状態になりまして、わしが最後に1人、仕事場に残っていたんですけれども、先に帰ったスタッフのほうから電話があって、下に怪しいやつがずっと待っていると、これは危ないぞと、だから今は帰るのはよせと、出て行くなというようなことを言われて、それで実際スタッフがその山形というのに声をかけて、撃退してしまいました。

 それ以外には、わしが書店でちょっと立ち読みしていたら、その書店の外側にずっとわしを見ている男がおりまして、何でわしを見ているのだろうというふうに思って外に出て歩いていくと、ずっと尾行してきましたので、市場の中に逃げ込んで、ぐるぐる回りながら、それでぱっと外に出てタクシーを拾って逃げていったりとか、そういうこともやりました。

 一番危険だったのは、喫茶店に入ったときに、わしと秘書で入って話していたんですけれども、その後で後ろに信者たちが五、六人、真後ろの席に座ってしまって、喫茶店の中はがらがらなのに真後ろに座ったものだから、正面に座っている秘書が余りにも不気味だと、薄汚れた服を着た男たちの集団5人がわしの後ろに座っているということで、ずっと睨みつけていたんです、信者たちを。それで犯行に及ぶことができなかったんです。結局、彼らは喫茶店から立ち去っていきました。

 それは認知されたもので、ほかにも尾行されたりとかしていたのかもしれません。非常に危うかった。でも、何者かはわからないわけですよ、ただ尾行されているということだけ常に察知しているという状態ですから。そのときに、玉川警察署のほうに行って、怪しいやつがずっと尾行するからこれを何とかしてくれというふうに頼みました。すると、全然受け合ってくれない。それで、わしは当時小沢一郎さんと対談をした雑誌を持っていたので、それを見せびらかして、ちょっと聞いてくれんか、わしはこういう知り合いもいるみたいなことを言ったら個室のほうに通されまして、それで上の人たちが出てきまして、話を聞いてくれました。

 けれども、最終的には、あなたのところに、玄関の中に一歩でも入ってきたら電話してくれと、そうすると警察は対処できると、そうでなければ対処できないというふうに言われたもので、わしはすごく腹が立って、一歩入られたらもうそこで殺されるかもしれないのに冗談じゃないよというふうに思いまして、これは非常に危ない状態だなと思って逃げ回る日々が続いていたんですけれども、95年の元旦にオウムの上九一色村からサリンが検出されて、3月に地下鉄サリン事件が起こりました。

 そうすると、上のほうから指示があったんでしょう、玉川警察署とか、そういうところからわしに挨拶に来て、これから巡回パトロールをするということになって、1日に二、三回ぐらい郵便受けの中に「異常なし」みたいなメモを入れてくれるようになりました。それとてパトロールしていないときにわしが襲われたらどうするんだという話にもなるんですけれども、結局、6月ぐらいに暗殺計画というのが新聞にだっと載りまして、それで、ああ、やっぱりそういうことだったのかということが発覚したということです。

 それと、あともう一つ、薬害エイズ事件というのにわしはかかわっておりまして、ちょうど同じ年に並行してやっていたんですけれども、この薬害エイズ事件というのは、子供たちが非加熱製剤を注射しまして、それでエイズを発症してしまったと。子供というのは、わしにとっては子供漫画でデビューして「東大一直線」「おぼっちゃまくん」というヒットを出しておりましたので、子供に対する思い入れというのは人一倍強いんですよ。だから、子供たちが仕事場にやってきて、頼まれたら、もうちょっと引き受けざるを得ないということで救う会の代表に就任しまして、そのために自分の読者の学生たちを扇動しまして、厚生省の周りを取り囲んだりとか、そういうことをやっておりました。

 それで、なかなかこれが打開できない。郡司ファイルと当時言われていたんですけれども、そのファイルを厚生省が出さないんです。非加熱製剤が危険であるかどうかの認識を証明するファイルだったんですけれども、これがなかなか出てこない。非常に行き詰まっているところで、「朝まで生テレビ!」に出たときにこの問題を訴えたんですけれども、知識人たちが、国家というのは隠さないかんこともあるとか、なかなか謝罪できないものだとか、あるいはこれは共産党がかかわっているんだとか、そんなことを言いまして真面目に考えてくれないんですよ。それで頭にきまして、番組の最後にパネルに「天誅」と書いてどかんと出したんです。ことしの目標で「厚生省に天誅を加えてやる」ということを宣言してしまったわけです。

 もう本当に毎日毎日子供が死んでいきますので、わしは葬式とかあんなのに出かけていって、非常にたまらない思いになってしまっていたんです。それで、年が明けてから、厚生省に何か一泡吹かせてやろうというふうに考えて、学生に電話しまして、とにかく人畜無害な、例えば色がばっと出るとか、あるいはにおいが出るみたいなガスが、そういうものはないのかと、わしが厚生省にそれをばらまいてきてやるよと、それで逮捕されようじゃないかと、そうすれば、マスコミが注目するだろうと。どうしてそこまでわしが考えなければいけなかったかということを国民にもっと啓蒙するしかないというふうに覚悟しまして、そういう薬剤はないものかと。第一、非加熱製剤をエイズ入りなのにばらまいているということは、子供たちに対する国家による無差別テロということになるわけですよ。権力に一矢報いるためには、全く無害な、それぐらいのパフォーマンスぐらいやったっていいでしょうというふうに思いまして、そういう相談もしていたりとかしました。

 これを盗聴されていたりとかすると、わしはちょっと大変なことに、既に何もやらない間に逮捕されていたかもしれないというような気もしますが、結局のところ、1月に菅直人さんが厚生大臣に就任しまして、厚生省から資料を一括して出させてしまった。それで謝罪に結びついたんです。菅直人さんはなかなか最近評判悪いみたいだけれども、とてもいいことをしているんです、あの人は。あの人のおかげで、わしはテロをやらずに済んだんだから。

 テロとかといったって人を傷つけるようなものじゃないですから、パフォーマンスですよ、表現者としての。結局、わしのような人間というのは、基本的に権力を持っているわけじゃないですから。一市民ですよ。物を言う市民です、わしは。ほとんどの人は物言わぬ市民です。だから、ふだん自分たちはまさかそういう切羽詰まった状況に追いやられて、何かやらなきゃいけないようなぐらいの感覚になるとは誰も思っていませんよ。ほとんどの人間が、自分たちはただ安全に暮らしていくだけだから、たとえ監視されていたって自分たちが安全なほうがいいというふうに思っているでしょう。

 けれども、物を言わぬ市民は、あるとき物を言う市民に変わってしまうことがあるんです。それはやっぱり子供が被害に遭うとか、いろんな切羽詰まった状況になれば、物を言わざるを得なくなるんですよ。そういう物言う市民というものをどう守るかというのは、民主主義の要諦ですよ。これがなかったら、民主主義は成立しませんよ。そうでしょう。

 だから、わしは民主主義というものを守るためにも、わしは自分のような物を言う市民というものが必要だと思っています。この世の中に必要だと思っています。そういう人たちが自分の言論を萎縮させるというようなことがあると非常に困る。健全でない。わしは自分は保守という立場だと思っています。保守という立場は、決して権力を守るための存在ではありません。公を守るための存在だと思っています。権力と公というのは、合致しているときはとてもいいいんです。公を達成するために権力がちゃんと施策を実行していってくれれば、そうすると、わしも大変助かるんです。

 けれども、往々にして権力と公というのは分離してずれていくんです。そういうときにわしは、権力と公どっちにつくかといったら公につきます。世の中の最大多数の人がなるべく幸福になるような方法というものを見つけて、そのために闘わなければいけません。わしは今後も戦いますよ、これは宣言しておきますけれども。権力を自民党が握ろうと、民進党が握ろうと、共産党が握ったらもっと戦うかもしれないんですけれども、とにもかくにも権力に対してわしはなびくことはない、従順になることはない、公のためならば戦う、そのためには結構ラジカルな手法もとるかもしれませんよと、こういうことを宣言しているんだから、今から公安はわしのことをちゃんと盗聴したり、メールを調べたりとかしますか。

 そして、組織なんとかというのは、わしもゴー宣道場という、組織というふうに無理やり見てしまえばそういうものになるようなものを経営していますから、だから、ここの誰かと相談していたとかというふうにいったら、大きく網をかけて、この組織の中で共謀しているとかというふうに言われれば、何だかんだわしのそういう情報は盗まれてしまうこともあるでしょう。

 大概、日本でも、もうオウム真理教ほどのテロなんか起こりませんよ、あれほど壮大なものは。結局、オウム真理教問題だって、サリン等禁止令みたいな、そういう何か法律がもうできているわけでしょう。そうなるとそういう部分もかなり封じられている。日本国内でやる中核派かなんかなどというしょぼいテロなんか、火炎瓶を吹っ飛ばすぐらいのものでしょう。

 テロなんていうのは大体海外から入ってくるものですよ。そしたら、水際でとめなければならないですよ。そうすると、本当だったら飛行場を民間の管理だけに任せていていいのかとか、国家がそこを管理しなければいけないんじゃないかと、アメリカとか、わしはしょっちゅうハワイとかへ行きますけれども、物すごく入国のときの管理が厳しくなってしまいました。あれは国家がやるようになったからでしょう。外国から入ってくるでしょう、普通テロは。日本国内からのテロなんてものはオウムが最大のもので、果たしてどれほどのものができるかわかりません。

 それよりも、この共謀罪の非常に危険なところというのは、物を言う市民が萎縮してしまって民主主義が健全に成り立たなくなるんじゃないかということなわけです。だから、わしはそのことを、自分自身が監視されないかということを非常に危惧しております。一般国民は気づかないでしょう。物言わぬ市民である限りは、権力に対して従順な羊でいるかもしれません。でも、誰でもそのくらいエスカレートして、自分の気持ちが、情念がほとばしってしまうときはありますよ。それで、権力と闘わなきゃいけなくなることもあるわけです。そういう権力と闘う、物言う市民を守ること自体が民主主義です。

 それは、今現在のすぐ短期的なことだけ考えたってだめ。政治家というのは、将来ずっと先にわたってもこの国の民主主義が健全に発展するかどうかということまで考えた決断を下してほしいということをお願いして、わしの発言を終了します。

 以上です。(拍手)