おかわり

たーんとおたべ

aikoの「青空」

1年近くブログの更新が滞ったのは、1年近くaikoが新曲を出さなかったせいです。
でも、1年ぶりの新曲は、やっぱとんでもなくすばらしかったです。
軽やかで、甘くて、かわいくて、痛くて痛くて……すっごいいいです。

 


aiko- 『青空』music video

 

私、例えばスポーツを題材にした漫画読んでて、一瞬でも「作者、おまえ自分でしんどい稽古したことないやろ、しんど過ぎて、あー、朝起きたら体育館が火事で燃えてへんかな……って妄想したことないやろ」という考えが頭をよぎってしまったら、もう、先、読まれへんのよね。逆に、読んでて、あの吐き気がするような感覚をちゃんと覚える漫画は信頼できるし、没入できる。安心して物語に耽溺できる。

 

私は、aikoの音楽に浸かり、溺れることができる。aikoの描く喜びや苦しみ、醜さすら包含した美しさは、全部きちんと熱を帯び、湿気をはらみ、重みを持った手応えのある「ほんとうのこと」に思える。事実であるかどうかではなく、人間の真実として受け止められる。だからこそ、信頼して、安心し切って、彼女の創る音楽の世界にダイブし、浸り、泳ぎ、たゆたい、惑溺することができる。それは希有な体験で、ほとんど奇跡だ。

 

今回の新曲は、そんな歌。
街角に行き交うちっぽけな女の子たちの、ささやかな世界がはらむ、どうしようもなく「ほんとうのこと」。人間が、女の子たちが、生き物である限り、どうしようもなくずっと逃れることのできない「ほんとうのこと」。それをaikoは余すことなく、冗長にもならず、描き、切り出す。ああ、何てすばらしいんだ!!!これこそが「歌」なんだ!!!と叫びたくなる。

 

 

■歌詞 http://j-lyric.net/artist/a000619/l04f84e.html

 

aikoが「体を脱いでしまいたい」、「目の奥まで苦い」と歌ったその感覚、私たちは知っているのよ。恋が破裂して終わってしまっても、触れられた感覚は身体にこびりついて残っている。寂しいと泣いている。そりゃそうよ、間違いだと、引き返さなきゃと理性が叫んでいるのに手放すことができなかったほど執着したんやから。「戻れるわけが…」と表した、最後まで言い切らない、言い切れない感覚、痛いほど心に切り込んでくる。ここに絶対「…」入るよなって思って聞いてた。CDを開封して、歌詞カードで「…」を確認して、そーやんな、そこはやっぱりそーやんなって独り納得したりした。

目の奥まで苦くなるような恋でも、「ほんとう」なときだってある。薄汚れていると感じる空に、破裂した恋の破片がキラキラと天に召されていく…… だって、あなたはほんとうに好きだったじゃない、恋をしていたじゃない、ちゃんとかわいい素敵な女の子だよって、そんなふうにメロディーが、声が、音が言ってる。

 

カップリングに「愛した日」が入るみたいで、後日譚みたいになっているのもいいなって思った。
今は悲しくて、切なくて、やりきれなくて、涙で歪んで見えている空も、きっとちゃんと晴れるよ、いつか、晴れるんだよって、そんな言葉が聞こえた気がした。今はぐっちゃぐちゃになっても大丈夫なんやで、そんなあなたも愛してるよって、aikoが言ってる気がした。

 

 

 

あと、ここまで書いてふと思ったのは、
歌詞のメイン部分「何にでも頷いてって今思い返すと馬鹿みたいだな」、「ぼーっとした目の先に歪んだ青い空」、「本当は涙で見えないただの空」、ここの部分って、恋が終わって振り返ってみるに恋した相手は何の変哲もない普通の人間だと、「世の中にこんなすばらしい人はいない」とばかりに盲信し、服従し、信仰していたけど、そんなのはほんとうの青空じゃないと、そういうことなのかな……。

「明日の歌」と似ているなって感じた。